全国のコミュニティカフェにお話を伺う、コミュニティカフェをめぐる旅。

今回は、横浜市金沢区のコミュニティカフェ「さくら茶屋にししば」に伺います。

高齢化が進む横浜市南部地域で、多世代交流を進めていらっしゃるカフェなのだとか。

一体、どのような経緯を経て現在まで活動を続けられてきたのでしょうか。

NPO法人さくら茶屋にししば理事長の岡本溢子さんをゲストに迎え、旅がスタートします。

ゆっくりとお話を伺っていきましょう。

■高齢化の進む地域に危機感

さくら茶屋にししばのお話は理事長の岡本溢子さん、副理事長の炭𥧄美枝さん、平林美玲さん、事務局長の阿部茂男さんが参加し、4人体制でスタートしました。

パワーポイントの表紙には、名前の由来になった美しい桜の写真があしらわれています。

「さくら茶屋は地域住民との協力で世代を超えた交流を促進し、かつ安心・安全・やさしさと楽しさ溢れる街づくりをめざしています」という理念も、スライドで紹介してくれました。

現在、370万人を超える人口を抱える横浜市。

南部にある金沢区は市内でも高齢化が進んでいる地域の一つで、特にさくら茶屋の近所である西柴4丁目の高齢化率は、40%を超えています。

さくら茶屋が行ったアンケートの回答者の割合も、70代以上の人が半数を超えていたのだとか。

西柴地区は数十年先の日本が直面する高齢化にまつわる諸課題に、早くも直面しているのです。

さらに、世代別人口分布のデータも比較してみます。

2000年は、高齢者を含む世帯数は全体の4分の1強でした。

ところが、20年経った2020年には高齢者の世帯数が半数を超えているのがわかります。

今後さらに20年経過すると、2020年の世帯数の4分の1が空き家、または空き地になるかもしれないという試算まで出てしまいました。

そのまま放置していると、まちがなくなってしまいますよね。

でも、西柴地区は何もしない道を選びません。

西柴地区は、さくら茶屋開設の10年以上も前からボランティア活動が盛んな地域でした。

「困った時はお互い様!」を合言葉に、高齢者や子育て世代への取り組みをスタートさせます。

しかし、活動している世代や場所がバラバラで、なかなか思うような成果が出ません。

西柴地区の人々は、「いつでも誰でも気軽に立ち寄ることができて、おしゃべりしたり食事をしたりして自由に過ごせる場所と、世代間交流もできる場」が必要だと考えるようになりました。

そのタイミングで、横浜市が「ヨコハマ市民まち普請事業」という補助金制度をスタートさせたことを知った西柴地区の人々。

補助金申請には審査が2回あり、一次審査が通った段階で住民にアンケートを実施しました。

アンケートでは、「商店街を活性化してほしい」「軽食や喫茶が楽しめるお店が欲しい」「惣菜売り場が欲しい」「パーティーなどができる場所がほしい」といった、場所が欲しいという要望がたくさん。

最終的に270世帯から回答を得て、地域のニーズを実感しました。

これらのニーズに応えたいと、徹底的に話し合います。

ただ、どれだけ思いが強くても、事業として持続可能な経営ができるかどうかは別次元の話です。

さくら茶屋の創設メンバーの皆さんは、この点で非常に苦労したのだとか。

そこに救いの手を差し伸べてくれたのが、コーディネーターさん。

それぞれの思いを整理して、的確にアドバイスをしてくれました。

24人の協力者を得て、補助金の審査も合格。

「5年間は頑張ってくれ」という横浜市の声もあり、まずは5年間頑張ってみようと決めたのでした。

こうして2010年5月、「さくら茶屋」が誕生します。

 

■さくら茶屋はどんな場所?

さくら茶屋ができるまでを学ぶことができた私たち。

ここからは、さくら茶屋がどんな場所なのかをより詳しく学んでみましょう。

さくら茶屋は、2010年5月にオープンしました。

営業時間は、月曜日から土曜日の11時から17時まで。

さくら茶屋では、曜日ごとに違うランチを提供しています。

月曜日はオムライス、火曜日は天ぷら…というように、ランチに和洋中を取り揃えているのも特徴的です。

スタッフさんもボランティアで、辞めた人はほとんどいないのだとか。

厨房が狭く大人数で調理ができないため、意欲のあるボランティアさんたちにどう働いてもらうかを考えて、曜日担当制を導入したのです。

あくまでボランティアさんの生活を豊かにするのが第一であり、無理のない範囲で参加してほしかったという言葉が印象的でした。

ランチだけでなく、100円で購入できるお惣菜も用意。
天ぷらやしゅうまいといった、美味しそうなメニューが並びます。

さらに、レンタルボックスや朝塾で天候などに左右されない固定収入も確保。

固定支出を賄うために、さまざまな工夫をしているのです。

レンタルボックスを利用している87歳の女性は、「自分が作ったものを、他人が評価してくださるのが嬉しくて。今度はこんな工夫をしてみようといった、意欲がどんどん湧いてきます。まさに生きがいです」と話していたのだとか。

女性の娘さんも「最近、母が元気になってきました。よかったです」と変化を実感している様子。

固定収入を得る目的で始めたことが、実は地域の役に立つことだったと実感したと言います。

さらに、朝塾。

朝7時半から8時までの30分、小学生に勉強を教えていました。

元小学校教師のボランティアさんが情熱を持って、指導に当たっていたそうです。

保護者からは「こどもたちが規則正しい生活になって良い」と好評でした。

固定収入の助けにもなっていましたが、10年目の区切りで朝塾は終了。

現在は、新しい形態で朝塾のようなことをできないか、模索しています。

朝があれば、夜も活動しているさくら茶屋。

「西柴夜話」と題した交流会をしています。

何かに詳しい人にお話をしてもらい、交流と学びの場を提供。

夜話に参加した人と話していく中で、初めて参加した人が次回の夜話講師になることもあるのだそうです。

そうしてできたつながりをもとに、趣味の教室も開催。

さまざまな教室がありますがどれも人気で、講師も生徒もやる気満々だそうですよ。

 

■こどもたちや子育て世代のために さくらカフェ

2013年9月、さくら茶屋の姉妹店「さくらカフェ」がオープンしました。

営業時間は、月曜日から金曜日の10時から17時半まで。

さくらカフェでは、こどもたちの居場所として遊びや落書きのスペースを設けています。

お母さんとこどもが通いやすい、柔らかな雰囲気を感じますね。

ランチメニューで洋食中心のおしゃれなメニューを出した結果、若いママさんたちが集うようになりました。

他世代交流イベントとしておこなっているものの一つが、2016年から実施している「街の大家族食堂」さくら食堂です。

当時は、こども食堂が大きな話題となっていた時期。

さくら食堂は、こどもの孤食だけでなく、高齢者の孤食も問題だと捉えました。

「大家族で夕食を食べよう」という思いで始めたさくら食堂は、現在月2回の開催で、毎回約100人の参加があるそうです。

さくら茶屋やさくらカフェの取り組みが、地域に浸透している証ですね。

さくら茶屋では高齢者中心の取り組みもしています。

認知症カフェや介護予防・生活支援事業などです。

毎週月曜と木曜日にはげんきライフと題した介護事業が健康チェックからはじまります。

健康体操や合唱といった、運動だけではないプログラムを用意しています。

運動が苦手な人でも、おしゃべりをしに、歌いに…気軽に参加できそうですね。

このほかにも、買い物支援や広報誌の配布(Facebookも活用)といった多種多様な活動をしているさくら茶屋と、さくらカフェ。

新型コロナウイルスが広まってからは、お弁当のテイクアウト営業を中心にしているのだとか。

感染対策を徹底し、神奈川県のマスク飲食や感染拡大防止協力店の認証取得などに動いています。

イベントもほとんどがお休みとなり、オンライン環境も整え始めているそうです。

こどもたちの国際交流や自宅から参加する歌の集いなどオンラインイベントも行うようになりました。

コロナを悲観的に捉えず、新しい挑戦を常に生み出していく姿勢が素晴らしいですね!

さくら茶屋では、毎月のスタッフ会議やスタッフ同士の交流を大事にして、全員が納得して楽しめる環境を作ることを大切にしているのだとか。

利用者さんや金銭的支援をしてくれる賛助会員、活動に参加して登録してくれている正会員、登録はしないまでもお手伝いしてくれる協力者を合わせると、250名以上の人がさくら茶屋に関わっています。

皆さんのおかげで、さくら茶屋は運営できていると熱く語られていました。

説明を最後まで伺っていると、「困ったときはお互い様!」という西柴地区の合言葉に、すべての活動が繋がっているような気がします。

 

■説明を終えて-旅のナビゲーターとのトークセッション

さくら茶屋およびさくらカフェの説明を終え、視察会は旅のナビゲーター・斉藤保とのトークセッションに入っていきます。

斉藤保(以下、斉藤)
時間もぴったりのご説明、阿部さんさすがです。ありがとうございました。岡本さん、代表として何か補足説明がありましたらお願い致します。

岡本溢子さん(以下、岡本さん)
私がこの活動に参加したきっかけは、定年退職後に参加した地域のボランティア活動でした。働いていた頃は地域に何もできなかったので、地域に恩返しをしたいという気持ちがあって。ボランティア活動に参加して、4年くらいその団体で代表を務めました。その4年間の活動を通して、「地域にはいつでも、誰でも気軽に集まれる場所が必要だ」ということに気づいたのです。それまでの活動は月に1〜2回、自治会館を借りて行っていたので、毎日行ける場所ではありませんでした。コミュニティカフェなんて言葉は知りませんでしたが、活動の拠点が必要だとは感じていたと思います。まち普請があって、協力者を募り、補助金の給付が決定した際は本当に嬉しかったですね。私たちはお店を開いたことなどない人ばかりで、「どうして毎日開けているのですか?」と聞かれることも多いのですが、私の中では「お店は毎日やっているもの」という考えがあって。知識のない中で始めましたが、みんなで話し合って、形にしていくことを続けられているのかなと思っています。来てくれたボランティアさんにも、みんなで声をかけました。ボランティアを続けてもらうためには、ボランティアさん一人一人を全面的に信頼することが大切だと感じています。信頼して仕事を任せ、任せたからには何も言わずに見守る。それが大事なのかなと思います。仕事が終わったら、感謝することも大切です。信頼して、仕事を明確にして任せ、完了したら感謝する。このサイクルをきちんとできれば、ボランティアさんは辞めることなく長く続けてくれるなと感じています。コミュニティカフェを始めてからは、全国にこのような場所があればいいなと思うようになりました。居場所は身近になければいけませんから、地域住民の徒歩圏内にあることが大事です。コミュニティカフェは少子高齢化の諸課題に対する、処方箋の一つになるのではないかなと思っています。素人だった私たちにもできたことですし、まずは私たちの活動を全国の方に知っていただき、それぞれの地域で実践してほしい。その願いを込めて、本を出版しました。

斉藤
深掘りしたいポイントが、いくつもあります。私も話し合いの場や、仕事を進めるプロセスが大事だと思っています。約80名のボランティアさんと対話を重ねてやってこられたのだろうと思いますし、信頼して任せることの凄さを感じました。全国各地のコミュニティカフェでは、なかなかボランティアが集まらないとか、集まってもうまく機能しないという声をよく耳にします。信頼して任せ、感謝するというのは一聴すると簡単そうに聞こえますが、大変なことですよね。「ポストの数ほどコミュニティカフェ」、いい言葉だと思いました。
続いて、副理事長の炭𥧄さんに伺います。関わられてからの感想や、苦労話などありましたら教えてください。

炭𥧄美枝さん(以下、炭𥧄さん)
副理事長の炭𥧄です。私は福祉の現場で働いていた経験があり、定年してから4〜5年のブランクがありましたが、阿部さんに誘われてボランティア活動に参加させていただくことにしました。当初はさくら茶屋でランチ作りに専念していましたが、2017年に横浜市の介護予防事業に協力した「げんきライフ」が始まってからはさくらカフェにも関わっています。国の意図としては、地域で認知症予防や介護予防をしていってほしい思いがあったようです。私たちは制度に飛び込んでいったわけですが、認知症や介護予防に不安な高齢者を地域で支えていくことは、とても重要だと感じています。コロナになっても休んだのは2ヶ月だけで、感染対策に注意して継続できたのが高齢者の方にとっても良かったのかなと思いました。さくら茶屋のお手伝いも続けているので、テイクアウトのお弁当を買いに来られた地域の方との会話などで地域の実情にも触れています。そこで感じたことを、介護予防に活かしていくサイクルになっていますね。お弁当の購入客を見ると、若い世代やこどもたちも増加していて、地域の変化にも気づきやすくなっています。コミュニティカフェの大切さを痛感していますね。地域の皆さん、ボランティアさんと一緒に地域のことを考えるのは重要ですし、ボランティアさんの継続に地域の方の力が必要だとも感じています。

斉藤
げんきライフを始めてから、利用者との関係性に変化はありましたか?

炭𥧄さん
その人の意外な一面を見ることができるのも楽しいですし、週1回のげんきライフをとても楽しみにしていらっしゃる方が多いのかなという印象を持っています。市から補助金をもらって行っているので、プログラムを毎回考えるのは本当に大変です。利用者の方にいきいきと過ごしてもらうのが一番なのですが、準備は大変ですね。

斉藤
こども関係のことも伺ってみましょう。平林さん、お願い致します。

平林美玲さん(以下、平林さん)
平林です、よろしくお願い致します。さくら茶屋でこどもに関するイベントや、多世代交流に関わることを担当しています。私は結婚してすぐ渡米し、こどもが1歳半になるくらいまでアメリカに住んでいました。もともと横浜出身で今も金沢区在住ですが、帰国後は孤独感が非常に強くてびっくりしましたね。知り合いがほとんどいないし、まちの人と会話する機会もない。このまま子育てをしていくのは厳しいなと思っていた中、地域で開催されていた週1回の親子の居場所の様なイベントがあって。そのイベントに参加して、岡本理事長をはじめ現在のさくら茶屋のメンバーたちと知り合いました。「まち普請の補助金が通ったら、地域の居場所を作りたい」という思いを聞き、最初は「私は何もできないけど、オープンしたら行きます」という、応援団のようなスタンスでいましたね。実際にさくら茶屋ができて、お店に通っているうちに、理事長から「こども向けのパーティーをやろうと思っているから、一緒にやらない?」と声をかけられました。始めてみると、地域の知り合いが一気に増えましたし、孤独感がなくなっていくのが実感できて。誰かと話したければ、さくら茶屋に行けばざっくばらんなお話ができる。ママ友同士でお茶もできるし、パーティーにも参加できる。お手伝いという形から始めて、生活にも彩りが出ました。居場所って、大事ですね。ママ友同士だけというのは、大人同士の関係性やこどものトラブルもあって、実は不安定なものです。でも、さくら茶屋という場所なら来る者拒まず、去る者追わずの程よい距離感で会話できます。「発達に不安があるこどもについて相談できる居場所が欲しい」というママ友の声から「発達凸凹児 親の会」というグループが立ち上がったほか、両親が共働きでこどもと一緒に夕食を食べられない家庭もあると知り、大家族食堂も実現できました。他にも、コロナになってからこどもが遊べる場所が少なくなってきたため、乳幼児の遊び場を2021年6月から始めています。自分たちが実際に困ってきたことを問題の中心に据えて、さくら茶屋という団体があるからこそみんなで知恵を出し合って課題を解決できているのかなと感じていますね。私自身も活動の中で友達や理解者が増えて、視野が広くなりました。さくら茶屋に参加して、本当によかったです。

斉藤
西柴地区の人とは、笑い話で「街中で岡本さんと知り合うと、翌日にはさくら茶屋のボランティアになっている」とよく話していました。平林さんも、そのような感じなのでしょうか。

平林さん
気がついたら、自分から動く方になっていましたね(笑)

斉藤
自信を持ってボランティアを勧められているというか、さくら茶屋でボランティアをすることが相手にとってプラスになるということに、確信を持っている感じがしますね。
平林さんにもう一点伺います。お話のあった「発達凸凹児 親の会」や大家族食堂など、ぽんぽんとアイデアが出ていたように聞こえるのですが、活動をしていく原動力が気になります。実際に新しいことを進めていくと、人材配置やコストといった課題も出てくると思われますが、どのようにして乗り越えてきたのでしょうか。

平林さん
初めに目的を持って活動をスタートさせるというより、さくら茶屋にみんなで集まって話している中で、すでに始まっているような感覚です。凸凹児の会についても、不安を抱えているお母さんが2〜3人集まってランチを食べながらずっと悩みを話し合っているという状態があり、「それなら、仲良し同士だけでなく同じ悩みを持っている人もいるのでは?」という岡本さんの声かけでスタートしました。こども向けの季節のイベントもやっていますが、これも元々はパーティーや飾り付けが好きなママたちが「自分のこどものためだけにやるのは大変だし、お家にお友達を呼ぶのも大変。でも、場所があっておやつを出してくれるなら絵本の読み聞かせくらいはやるよ」といった提案がありました。「じゃあ、やっちゃおう」と(笑)やるために人を集めたというよりは、人がいて、それぞれの得意なところで協力してもらったという感じですね。そのような経緯もあり、人が足りなくて大変といった苦労は、あまりありませんでした。「居場所」の持つ力は、そういうところにあるのかもしれませんね。

斉藤
一般的な会社では、新しいことを始める時って、提案を理事会にかけた後に総会にかけないと物事が進まないこともよくありますよね。でも、さくら茶屋の場合は場所があって、すでに当事者がいる。ごく自然にやりたいことが集まって、実現に動くのがさくら茶屋の文化なのでしょうか。その辺りは、いかがですか?

平林さん
滞在時間が、全体的に長いですよね。ランチを食べてすぐ帰るのではなく、スタッフとおしゃべりしたり、お客さん同士で話したり。黙って食べて帰るということがまずなかったですね。その人が抱えている悩み…たとえばお姑さんとの関係で悩んでいる人と話していると、お姑さんに近い年齢のお客さまが、逆に孫との接し方で悩んでいることを話してくれます。会話の輪が、どんどん広がっていくのです。課題を共有していくと、「こういう場があると良いのではないか」といったアイデアが自然に浮かんでくるというか。食べながら話して、コミュニケーションを取ることが重要なのかなと思います。

斉藤
岡本さんに伺います。これまでの歩みの中で大変だったことや、課題を乗り越えるコツなどがあれば教えてください。

岡本さん
よく聞かれるのですが、あまりないですね(笑)あまり大上段に構えるのではなくて、「こういう場所があったらいいな、じゃあやってみようか!協力してくれる人、この指止まれ」という感じで人を集めてきましたから。3月頃にまち普請の存在を知り、大急ぎで団体を設立して、5月には申請書類を提出していました。一次審査は熱意さえあれば通ると思っていましたが、二次審査前にアンケートを作りました。書きやすさを考慮して、1枚にまとめて。同時にボランティアも集めねば…と思っていたら、24人も手を上げてくれました。その年の中では、一番嬉しい出来事でしたね。その後は阿部さんが書類や事務作業もやってくれているので、助かっています(笑)その都度、助けてくれる人が現れるような感覚ですね。

斉藤
岡本さんは簡単そうにおっしゃっていますが、実は人材関係で苦労しているコミュニティカフェもたくさんありますし…何かコツがあるのではないかと思います。

岡本さん
ボランティアに誘うときは、「活動に参加すれば、あなたは必ずハッピーになる」と確信を持って誘っていますね。参加すれば友達も増えるし、やりがいのある仕事があるし、暇な時間も埋められるし、いいじゃないかと。皆さん最初は遠慮がちでも、だんだんハマっていきますね。若い人を誘うのは難しいですが、65歳以上の方にとっては、居場所があるというのは大きいと思います。

斉藤
阿部さんに伺います。さくら茶屋は、たくさんのプログラムを生み出していますよね。大きなプロジェクトを一気に始めることは少ないと思いますが、企画が出ればその都度予算や人員配置といった、意思決定が必要になる場面がありますよね。緩やかに「まずはやってみよう」という感じなのか、理事だけでも意思決定してから始めるのかが気になります。プログラムをスタートさせるときの仕組みがあれば教えてください。

阿部茂男さん(以下、阿部さん)
会議の重要性は感じています。会議の中でいろんな企画が出るのですが、岡本さんや僕は比較的イケイケタイプで(笑)でも、それを止める人もいます。話し合いの結果、なんとなく結論が出ていく感じですね。「こんな企画が出たから、やろう」とトップダウンで決めていくのではなく、きちんと話し合いながら現実的な計画が出来上がっていくのです。会計担当とは、かなりやり合っていますね(笑)また、事務局の会議で通っても、今度は運営委員会で揉めることもあります。行政からの提案やお客さまの要望、スタッフの発案などさまざまなアイデアを持ちあい、話し合いでブラッシュアップしていく感覚です。

斉藤
リーダーにモノを言える人がいると、組織がうまく回っているケースが多いように感じます。

阿部さん
企画やイベントをやると、参加者に感謝していただけます。その瞬間に、「やってよかった」と思いますね。

斉藤
定年後の男性をいかに取り込むかが課題とおっしゃっていました。さくら茶屋に関わっているシニア男性の割合は全体の1割程度。全国的に見れば、高い方です。それでも、地域に眠る逸材を探しきれていないという感覚なのでしょうか。

阿部さん
地域の方と、活動を共にする機会があります。さくら茶屋に属さなくても、地域活動には男性が来ることが多い。さくら茶屋にボランティアに来るまで進むことは、少ないかもしれません。それでも、自然と関わりはできているように感じます。その繋がりをきっかけにして、輪を広げていけたら良いですね。

 

ボランティアになれば、その人は必ずハッピーになると確信を持つ。

企画やイベントは勢いでやらず、必ず話し合う。

相手を信頼して、「やりたいことができるよ」とポジティブなメッセージを発信し続けるさくら茶屋の皆さん。

お話を伺っているうちに、自分の心が自然と穏やかになっていることに気づきました。

 

■旅を終えて

今回も、貴重なお話や言葉がどんどん飛び出しましたね。

人口が多い横浜市でも、高齢化は顕著になっています。

これからのまちのあり方を考えるときに、さくら茶屋がこれまで取り組んできたことは多くのヒントをくれているかもしれません。

さあ、コミュニティカフェをめぐる旅は、一気に西へ。

今度は、どのような出会いが待っているのでしょうか。