コロナ禍の中で、全国のコミュニティカフェを学ぼうとスタートした「コミュニティカフェをめぐる旅」。

第2回目は、福島県白河市にある「コミュニティカフェEMANON」に旅立ちました。

古民家をリノベーションしたカフェの主役は、高校生なのだとか。

若者が集まる場所のようですが、一体なぜ高校生なのでしょうか。

今回は、福島県白河市の「コミュニティカフェEMANON」の代表で、一般社団法人未来の準備室理事長の青砥和希さんにお話を伺います。

 

■カフェへの無限の期待-設立の経緯について


高校生向けのコミュニティカフェということもあってなのか、参加者の年齢層も前回の「浜の暮らしのはまぐり堂」と比べるとかなり若めです。

ナビゲーターの斉藤による青砥さんやEMANONの紹介の後、青砥さんが安心感のある語り口で話し始めました。

「僕、カフェに無限の可能性を信じている一人なんですよ」。

印象的な言葉から始まった青砥さんのお話、どんな展開があるのか非常に楽しみになります。

 

まずは、青砥さんからEMANONの立地など、概要についての説明がありました。

コミュニティカフェEMANONは、東北地方でも最南端にあたる福島県白河市にあります。

東北新幹線の新白河駅で乗り換えて、東北本線の白河駅からすぐ。

白河市は城下町であり、かつては商店や武家屋敷などが立ち並んでいた街でした。

EMANONも、古民家をリノベーションしたコミュニティカフェです。

 

白河市には地域の歴史が根付いていて、その歴史を大切にしていきたいという気持ちが伝わってきますね。

ラーメン屋さんやパン屋さん、バーなど、白河市の財産と言える地域のお店の紹介もありました。

白河の紹介を終えると、今度は青砥さんご自身のお話へ。

青砥さんは1991年(平成3年)、福島県に生まれました。

福島県立白河高校を卒業し、大学進学を機に上京。

大学1年生の終わりに、東日本大震災を経験しました。

その時に感じたのは、福島のことを何も知らないまま過ごした故郷での日々への後悔だったと言います。

福島生まれで東京の大学で学んでいる自分と、東京で生まれ育った友人。

福島について知っていることが、福島で育ったはずの自分と東京の友人でほぼ変わらない現実に、ショックを受けたのです。

福島で育った若者たちに、福島の魅力を自分の言葉で語れるようになってほしい。

そう考えた青砥さんは、大学院2年の時に白河市へUターンしました。

こうして2016年(平成28年)、コミュニティカフェEMANONをオープンしたのです。

 

■EMANONで実現する「自分のやりたいこと」-5つの柱と高校生へのこだわり

 

EMANONでは「地方都市の高校生のためのサードプレイスを目指す古民家カフェ」という目標を掲げ、「まなぶ」「すごす」「つぶやく」「つくる」「やってみる」の5つを柱としています。

高校生は、家と学校で過ごす時間が非常に多くなりますよね。

EMANONは、家や学校ではできない自分のやりたいことを実現できる場所なのです。

でも、なぜ高校生にスポットを当てたのでしょうか。

高校生は、実は大人と遜色のない行動力とアイデアを持っています。

でも、それを具現化できる場所が家と学校だけになってしまうのが実情。

別に福島のために何かしたいわけではなくても、人の役に立ちたいわけではなくても良いから、やりたいことをやってみる場所があると良いのではないか…EMANONには、青砥さんのそんな思いが込められています。

白河市には、大学がありません。

つまり、高校の3年間は若者が白河市で、福島県で過ごす最後の3年間になる可能性が非常に高いのです。

カフェの店舗用地に古民家を選んだのも、「白河市らしさ」を自然に感じられる場所にしたかったから。

少しずつEMANONの内装などもご紹介いただきましたが、おしゃれで洗練された雰囲気が目を引きました。

2階の和室は会員専用となっていて、イベントスペースとして活用されています。

強く印象に残ったのが、高校生に向けての利用案内でした。

 

①高校生は利用無料。何時間いてもOK!

②高校生はドリンク50%OFF!大人のドリンク代売上分は、高校生の活動支援に使われます。

③やってみたい!をサポートします。なんでも相談OK。お気軽にスタッフまで。

 

黒板アート風に、面白そうと思わせる文字が並んでいます。

実は、EMANONは白河市と協働で運営しているカフェ。

高校生から収益を得なくても、お店を運営できる仕組みを整えています。

ここまででも、EMANONがいかに魅力的な場所かがおわかりいただけているのではないでしょうか。

 

青砥さんのお話は、最近のEMANONの活動に移行していきます。

 

■高校生からどんどん発信-EMANONの活動

青砥さんから次にご紹介いただいたのは、最近のEMANONの活動。

まち歩きは、都会だと趣味にしている方も多いでしょう。

でも、実は白河市では自宅と高校の通学手段が車ということも少なくなく、きちんとまち歩きをしたことがない高校生も多いのだとか。

そこで、EMANONが主体となってまち歩きのプランを作成しています。

市役所や図書館などの公共施設から相談を受けることもあり、そこから事業が生まれることもあるとのこと。

その一つが、図書館への落書き事業です。

市内の図書館の窓ガラスなどに自由に落書きをしてもらい、歩いているだけでも楽しめる図書館になりました。

これ以外にも、定期的に行っているイベントもあります。

毎週金曜日は「alt_café」と題し、市内に住むALT(Assistant Language Teacher)の先生を招いて、会話を楽しむ会を催しているそうです。

もちろん、英語が話せなくてもOK。

学校から離れると、先生と生徒という関係性だけではない、人と人の対等なコミュニケーションが生まれます。

無目的にただ集まることが良いのだと、青砥さんが語っていました。

地域のキーパーソンを、逃さず活用している事例もあります。

地域のコーディネーター的存在である「りんごちゃん」を中心に、転勤などで新たに白河市にやってきた人たちをもてなして魅力を知ってもらうイベント「スナックりんご」を開催。

こちらも盛況で、いわゆる「大人の新歓」として盛り上がりを見せているのだそうです。

異色の組み合わせを助ける取り組みもあります。

EMANONのある商店街の近くに薬局があるのですが、他の薬局とは違うちょっと変わった特徴がありました。

なんと、その建物の3階はボルダリングジムなのです。

ボルダリングジムの設備は、定期的な清掃が不可欠。

EMANONにいる高校生に募集をかけたところ、何人かの高校生が手を上げてくれました。

こうして、高校生がボルダリングジムのスタッフと一緒に定期的に清掃を行うようになったのです。

他にも、学校の授業とリンクした活動もあります。

2022(令和4)年度から高校生の正式授業科目になる「総合的探求」。

地域や社会の課題を考えながら、自分の生き方を決めるような授業です。

青砥さんが学校から依頼を受け、SDGsの観点から地域づくりを考える講演を行いました。

これまでは、白河の良いところを知ろうとする事業がほとんどでしたね。

しかし、魅力と課題は表裏一体です。

EMANONでは、白河の課題を考える事業も行っています。

高校生たちが自分だけのプロジェクト「マイプロジェクト」(略してマイプロ)を立ち上げ、課題を見つけられるようなワークショップを開催。

高校1年生が自分たちのまちの魅力や課題を簡単に整理できるような内容で行っているのだそうです。

このように、EMANONの活動範囲は、まさに無限大。

高校生のやりたいことを応援し、若者が主体的に地域とかかわるきっかけとなる場所であり、居場所が少なくて生きづらさを感じている人々の居場所でもあるのです。

先ほども青砥さんが高校生にこだわる理由を少しご紹介しましたが、他にもたくさんの理由がありました。

 

■なぜ高校生なのか?-深刻な地方の若者事情

 

青砥さんが次に語り始めたのは、若者たちの課題でした。

白河市を含む地方都市の人口推移を詳しく見てみると、若者の転出超過が目立ちます。

白河市に限って言えば、大学進学や就職のタイミングである10代後半〜20代前半の転出超過が顕著です。

前述の通り、福島県には大学が少ないため、大学進学や就職を機に多くの若者が福島を出てしまいます。

それは決して地元が嫌いになったわけではなく、地元の大学に定員がないことや東京が近いことも理由として挙げられるでのしょう。

それを裏付けるように、福島県民1,000人あたりの大学生の数は7.89人で、全都道府県中最下位。

青砥さんは、この状況では地域の素晴らしい文化を守っていくのは難しいのではないかと考えるようになりました。

白河市で過ごす最後の高校3年間で、家と学校以外の場所でずっといたい場所、何かできるところが必要だと感じています。

カフェを始めてから、少しずつ新しい地域との関わり方が生まれていることを実感されているという青砥さん。

今年の夏には「白河若者会議2021」というイベントを行い、市長をはじめとした行政と若者が意見をぶつけ合う場所を設けました。

成功を収めつつ、次々と新しいことにトライするEMANONと、高校生たち。

何か、大切にしている考え方はあるのでしょうか。

 

青砥さんは、ロジャー・ハートが提唱する「参画のはしご」を紹介してくれました。

ハートによれば、参画者が参画するときに主体的に生きていることが前提となっており、個人の主体性が重要になります。

また、活動のプロセスの中で他者との対話や協力、交渉や相互合意などのコミュニケーションが必要です。

さらに、参画者同士の多様性も尊重されなくてはなりません。

ジェンダーの問題などが表面化する中で、非常に先進的な考え方を取っているのですね。

そして、青砥さんは3つの縁が描かれた図を見せてくれました。

その図には、次の3つの要素が描かれています。

・自分が取り組みたいこと、こうありたいと願うこと(WILL)

・社会、世界の理想の実現に向けた課題(NEED)

・自分ができること、自分がやってみたいこと、自分ができるようになりたいこと(CAN)

青砥さんは、前述の通り高校で「総合的探究」の授業が必修科されたため、高校生や先生から「地域のことを全く知らない自分は、どうしたら地域とかかわることができますか?」という質問を受けることが増えたと言います。

WILL、NEED、CANの3つが重なったことをすれば地域ともかかわりやすくなると説明しても、多くの高校生はその3要素がバラバラになっていて、余計に悩んでしまうことがほとんど。

その大きな原因の一つは、高校生が思い描いている地域の課題が巨大すぎることです。

過疎をなくすには、ゼロカーボンを実現するには…解決すべき課題を、大きいところから捉えすぎているということなのでしょう。

せっかく地域に関心を持っているのに、壮大すぎる課題を解決しようと思ってしまっては挫折してしまいますよね。

課題を解決するためには、まずは自分を知ることから。

高校生たちは青砥さんたちEMANONのスタッフとのコミュニケーションの中で自分を発見し、社会と自分のつながり方を能動的に学びます。

さらに会話を重ねていくと、世界と自分のつながりで自分ができること、知っていること、できるようになりたいことが明確になっていくのです。

ここまでのお話でわかる通り、高校生たちが必要としているのはコミュニケーション。

EMANONの利用者にとって一番身近な存在であるスタッフは、大事な要素の一つです。

大学生やインターンの若者たちに来てもらい、なるべく高校生と年齢が近く、対等な立場で一緒に考えられる工夫も凝らしているのだとか。

東京の大学に通いながら、運営を手伝ってくれる大学生たち。

EMANONそのものが、地元に帰るきっかけになっているのかなと感じました。

「将来的に永住することはなくても、地元に帰ろうかなと思えるきっかけになれば良い」と語る青砥さんの声は、安心感を持たせながらも地元への愛や情熱に満ちているように感じました。

 

■説明を終えて-ナビゲーターとのトークセッション

青砥さんの説明が終わり、視察会は旅のナビゲーター斉藤保(株式会社イータウン代表)とのトークセッションに移行しました。

斉藤 保(以下、斉藤)
まず、EMANONの空間のことを伺いたいと思います。白河の歴史を踏まえて古民家を活用したとのことで、居心地もとても良さそうですよね。室内の照明や天井など、とても良い雰囲気ですが、これらは青砥さんのセンスで配置したのか、それとも専門の方がいらっしゃったのでしょうか。

青砥和希さん(以下、青砥さん)
僕自身は建築専門ではないですが、建物が好きで。壁紙やプラスチック製品だと、どれだけお金をかけるか、質の勝負になってきますよね。でも、古民家のリノベーションでは元からあるものをいかに生かせるかが勝負になってきます。お金の軸ではない次元で、良いものが得られると思ったのが一つですね。それから、福島はやはり一次産業が魅力だと思うんです。首都圏と比べると、農業も林業も盛ん。それであれば、福島の素材を使った空間を作りたいと思いまして。リノベーションの時は、僕と高校時代の同級生で建築を学んでいた大学院生、さらに家具のデザインを学んでいた大学の同級生の3人でデザインを考えました。その時から古民家でやりたいと考えていたので、都内近郊を含めて古民家をリノベーションして営業しているカフェをたくさん見学し、デザインを詰めていった感じです。

斉藤
ご友人の専門性を活かしつつデザインも考えられたのですね。カフェの空間って、居心地もすごく大事で。特に、EMANONのメインユーザーである高校生たちにとっては、そうした感性はすごく重要なんだろうなと思いました。

青砥さん
「高校生向け」という形にはしたくなかったんです。近い将来に東京や仙台に行ってしまう高校生たちに来てもらいたくて。大学生や社会人になってから「あれって子ども向けだったな」とは思われたくなかったんですよね。他のまちに行っても、「あそこで過ごした時間は特別だったな」と思ってもらいたい。それを考えると、自ずと素材を大切にすることや古民家のリノベーションへと繋がっていくんです。

斉藤
おそらく、皆さんが気になっていることの一つがお金(運営資金)だと思うのですが…先ほどご説明の中で、行政からの委託というお話もありましたね。差し支えなければ、年間のコストや行政からの委託・補助が全体に占める割合を教えていただけますか。

青砥さん
ざっくり言うと、7:3…全体の7割が行政からの委託事業です。残りの3割が自主事業で、主にカフェでの飲食物売り上げとなっています。経常収入が1000万円で、コストもほぼ同じ。とんとんの経営です。行政からの委託が700万円ほど、飲食物売上が300万円程度という感じですね。建物自体も賃貸なので、不動産屋さんと毎月賃料を払う賃貸借契約を交わしています。

斉藤
白河市は人口約6万人の都市です。EMANONに700万円支給するということは、市民が年1回缶コーヒーを買うのをやめて、一人あたり100円ちょっと払えば成り立つわけですが…人口6万の都市での700万円は、けっこう大きい額だと思うんです。市議会でも議題に上がるかもしれないし、公的資金を投入している場合、行政には説明責任が発生します。EMANONがどのようにして行政に公的資金を投入しようと思わせたのか、どのようなきっかけがあったのか伺えればと思います。

青砥さん
行政の期待のきっかけは、人口減少に対してどう向き合っていくかというところだったのではないかと思います。現在でも、委託事業の中にそういった期待が込められていると感じますね。ただ、「人口減少対策でやりましょうよ」と声をかけたわけではなく、若者としてこのまちで活動をしている実績があったので声をかけていただけたという側面が大きいです。事業があるから仕事を取りにいくというよりは、僕たちが何かを生み出して、「それを形にするためにこんな事業があると良いのでは?」というのが出発点だと思っていて。

発端は、2013年(平成25年)頃に僕も参加していた学生団体の活動でした。首都圏にいる福島出身の若者が、地元福島で中学生や高校生のために何かするという活動をしていまして。高校生への直接的な支援だけでなく、市長や地域の方と対話をして「これからのまちづくりはどのような施策をしていくべきか」という議論をする場がありました。そこで議論を煮詰めることができたというのが、EMANONを始める直前のタイミングだったんですよね。同じタイミングで、政府による地方創生事業が始まって…地方自治体にもそういった趣旨の予算がつくようになりました。最初は、国の補助金を使って事業が動いた感じでしたね。

斉藤
学生団体の時から培っていた信頼関係が、大きく影響していたのですね。僕たちも「行政の方と信頼関係を作るコツなどはあるのですか?」と聞かれることがよくあって、いつも答えに窮するのですが…青砥さんだったら、どう答えられますか。

青砥さん
うーん…準備、本番、振り返りを一緒にやることは大事かなと思いますね。何のためにその活動をするのか、なぜその場を作るのかを事前に伝えておかないと相手には伝わらないし、振り返りの時に「次はこのまちのためにどんなことができるかな?」という議論も立ち上がってこない気がします。1回ずつでも良いので、各作業を共有することが大事なのかなとは思いますね。

斉藤
行政の担当者によっては振り返りをやりたがらなかったり、準備などを委託先などに任せっきりにするケースもありますから…お話を伺いながら、担当者との巡り合わせも大切なのかなぁと感じました。
高校生が普段利用するような既存の公共施設(公民館、図書館など)との関わりは、以前からあったのでしょうか。

青砥さん
白河で高校生が使える公共施設には公民館、図書館、市民ホール、市民交流センターの4つがあるのですが、どこもコーディネート機能のようなものが弱くて。これは市の課題だと思っています。申請主義というか、「申請書出してくれれば貸します」、「チケット買うと言われれば売ります」という感じで。若者の潜在的なニーズをどう掘り起こすのか、活動にならないものをどう活用していくか…他のまちでは市民活動支援センターのようなところがそれを担っているのでしょうけど、白河ではそうした機能が弱いんです。問題意識はあるのかもしれないけれど、それを予算化するなどの具体的な対策はまだ行われていません。僕が相談を受けた時は、おせっかいとは思いつつも「イベントへの参加を募るにしてもいきなり参加申し込み用紙を配るのではなくて、募集説明会をやってみましょう」とか、「申請も紙で書いて送るのではなくLINEのアカウントを活用してみましょう」とか、ちょっとした工夫を提案しました。コーディネーターの悩みでもあるのかもしれませんけど、こういったところは評価されづらいんですよね…。

斉藤
現在の白河市からの委託には、コーディネーター業務は入っていないんですね。

青砥さん
そうなんです。公的機関との連携とか参画みたいなものは入っていなくて。高校生の地域社会参画を支援するっていう、かなり曖昧でだだっ広い事業内容になっています。よく捉えれば何でもできるけれど、裏を返せば行政が評価基準を設定しづらい。課題でもあるなぁと感じています。

斉藤
18歳人口がガクンと落ちるデータがありましたね。地方では県庁所在地なら大きな総合大学があっても、郊外にはほとんどないのが実情です。平成の大合併で人口5万〜10万の都市が増えてきて、みんな人口流出に困っています。青砥さんの活動が、そういった課題の解決モデルになっていくのかもしれないなと感じました。全国から講演依頼があるのも、そういったところが影響しているのかもしれませんね。

最後に一つ。WILL、CAN、NEEDの3要素のご紹介がありました。WILL、CAN、NEEDの3つの円が重なるところを目指すのが理想でしょうけど、現実はなかなかそう簡単にはいかないですよね。理想に近づくための努力と、歩み寄る姿勢が重要なのかなと感じているところです。
EMANONの活動の中で、青砥さんは高校生たちを「施設の利用者(顧客)」から「地域の主体者」へと意識を変えていかれていると思います。高校生がどのような目的でEMANONを利用するのかは、人それぞれ違うでしょうね。たとえば100人の高校生利用者がいたとして、そのうち何人くらいが地域活動に参画しているのでしょうか。

青砥さん
まず、市全体で高校生が600〜700人くらいいます。でも、それは歩いて通学できない、自家用車でないとたどり着けないような自宅から通っている子も含めての数字です。1年間でカフェに来てくれるのは、だいたい150人くらい。一度でも来てくれた高校生には、会員証を作っています。EMANONのイベント情報が届くLINEアカウントに登録してもらい、リピートしてくれるのが50人くらい。一回イベントに参加するだけでなく、自分のやりたいことをやってみようと何度も通ってくれるのは…さらにその半分くらいでしょうか。

ボランティアに参加するって、すごいことですよね。学校の先生からの紹介なら、先生に褒めてもらえるとか、成績アップに繋がるとか、自分にも利があるでしょうけど…EMANONのボランティアは、出たからといって成績に直結するわけではありません。それでもやってみようと思ってくれたのは嬉しいし、やらなくて良いことを自ら進んで引き受けるのは、高校生たちにとって初めての経験だと思うんですよね。

それはEMANONだけがすごいわけではなく、高校生自身の資質や能力にもよるのですが…高校生が主体となって白河市の東地域の農業振興を応援したり、手話カフェを作ったり。手話カフェを始めた子たちは、TikTokで見た手話が面白かったから始めたと言ってました(笑)手話を日常的に使っている方と、使っていない方のコミュニケーションの場を目指しているそうです。視線を感じるな…あ、そこにいた(笑)

青砥さんはカフェでお話しされていたので、青砥さんが話されているプロジェクトの当事者の高校生がたまたまいたようです。

現場のリアルがわかりやすい、ほっこりとした時間でした。

さあ、視察会はナビゲーター斉藤とのトークセッションを終えて、参加者からの質疑応答を受け付ける時間となります。

 

■参加者質疑応答

参加者の皆さんからも、熱い質問が次々と寄せられました。

参加者からの質問
EMANONには高校生がたくさんやってきますが、高校生たちはどのようにしてEMANONを知るのでしょうか。また、カフェ機能を使いたくて来る高校生と、地域活動に参加したくてやってくる高校生の比率はどのようになっているのでしょうか。

青砥さん
友達や先輩後輩からの口コミと、私たちが学校へ直接アプローチをかけているのが大きいですね。プラス、SNSの力も大きな要素です。自分の意志で何かを選び取ることって本当に難しいことなんだなぁと、高校生とコミュニケーションをとっていてよく感じます。中学生くらいまでの行動様式の中で、自分の意志で任意の場所に行って、任意の人とコミュニケーションを取るというコマンドがなかなかない。そうした経験のない15歳や16歳に来てもらうために、時には授業で紹介してもらったり、学校の先生経由でチラシを配ったり、口コミやSNSで繋がってもらえたり…手を替え品を替え、やっています。打てる手は全部打つというのが、答えかもしれません。

参加者からの質問
現場のスタッフはどのような方ですか。また、高校生がスタッフになることはあるのでしょうか。
スタッフの方に、研修は行っているのでしょうか。

青砥さん
毎年スタッフが変わるため、決まった研修は用意していません。説明で述べた通り、カフェの可能性を信じてやってきてくれる大学生はたくさんいます。多様なバックグラウンドを持っているので、高校生たちにとってはそれが興味を持ってもらえるきっかけの一つになっているのかもしれません。何らかのきっかけでEMANONと関わりを持ってくれた大学生がいて、彼らと一緒にこの場所の可能性を探しているという感じです。昨年のコロナ禍で大学を休学して、長期インターンとしてやってきてくれたスタッフもいます。
必要に応じて研修も用意しますが、これと決まった研修はありません。

参加者からの質問
市外に出ていった若者たちとのつながりを保つという点で、EMANONや行政が取り組んでいる施策はありますか。

青砥さん
私どもの施策で言うと、ゲストハウス事業があります。カフェ以上に小規模な施設で、民泊制度を使って小規模な宿泊施設を運営しているんです。ここを拠点にすれば、白河に継続的に関わりたい人々に時間的なゆとりを提供できます。昨年はコロナ禍でオンライン授業をする大学が多かったので、オンラインで授業を受けながら白河に滞在して、授業が終わったら地域活動をする大学生もいました。白河市もそれを認めてくれていて、白河市をフィールドに調査・研究する大学生を支援する「まちラボ学生プロジェクト支援事業」という事業を立ち上げています。

参加者からの質問
市や県に働きかけていることや、提言していることはありますか。

青砥さん
先述のまちラボ〜は、まさにそうです。制度化される前から、学生グループなどで働きかけをしていました。法政大学のゼミがEMANONに来てくれた時に、「こういうものがありますよ」と教えてくださって。これは制度化できるなと思い、市に働きかけました。

参加者からの質問
青砥さんから見て、現在の高校生はどのように見えていますか。課題があれば、それに対して何が必要かについても教えてください。

青砥さん
時代の先端を行っているなぁ、と感じますね。コミュニケーションの取り方を見てもみんな優しいし、多様性を容認できる価値観を持っている。実は、高校生が社会全体の課題を解決するヒントを持っていると考えているんです。ただ、彼らは考えていることを行動に移す手段がまだわからない。高校生の中に眠る潜在的な感覚を、見える化するお手伝いができたら良いなぁと考えています。

参加者からの質問
私も、カフェをやりたいと考えています。カフェを開くにあたって、準備しておいた方が良いこと(資格取得etc.)はありますか。また、必要なコネクションなどあれば教えてください。

青砥さん
先ほどご紹介したWILL、CAN、NEEDの3要素はどれも大事なのですが…僕は、自分の得意なものを磨くことが重要だと思っています。カフェは無限にコラボレーションできる業態です。コーヒーに特化するならコーヒーショップだし、DIYカフェがあっても良いと思うし、先ほどの手話カフェのようにサイレントオーダーを徹底するのも良いでしょう。いろんなことができるからこそ、ご自身の得意なことはそのカフェの個性になります。なんでも良いので、自分がやりたいことや好きなことを磨くのが重要ではないでしょうか。

参加者からの質問
EMANONを始めた頃の高校生と今の高校生で、白河というまちへの捉え方や考え方の変化があれば教えてください。

青砥さん
良い質問ですね。卒業していった高校生たちの追跡調査をやりたいと思うのですが、なかなか難しくて。はっきりと変わったなと感じることはあまりないです。学校の先生や保護者以外の大人との出会いが増えたかというと、そうでもない。たとえば、何年も前から商店街は衰退していると言われてきたけれど、それは今も同じですよね。要は、カフェを始めた5年前と現在の社会の課題って、そんなに変わっていないんです。ただ、コロナがありましたから…交わらずに同じ街に住んでいる人の数は、増えたでしょうね。

参加者からの質問
カフェをやっていてよかったことや、逆に大変だったことがあれば教えてください。

青砥さん
良かったことは、皆さんと会えたことですよね。いろんなテーマを掲げたことで、たくさんの人と繋がれたというのは大きいかもしれません。空き家のリノベーションを掲げて建築関係の人と繋がれたり、コミュニティカフェとしてもこうして皆さんと繋がれたり。

大変だったこと…うーん、続けることが大変ですね。スタッフも年々歳をとりますから、高校生からどんどん離れてしまいます。でもそのままではまずいから、継続的に新しい大学生に関わってもらわなくてはならない。カフェを始めてから今まで、発信と運営を続けていくことが一番大変です。

参加者からの質問
コロナ禍で、EMANON内や高校生とのつながりで変化したことはありますか。

青砥さん
コロナ禍になってすぐの頃は、白河市の高校を卒業したOBOGが高校生たちの相談に乗る、オンライン自習室を立ち上げていました。あとは、全国の高校生が白河を訪問してくれた時に、地元の高校生にも手伝ってもらいましたね。

参加者からの質問
「やりたいことをやりたい!」とキラキラした若者が集まると、「自分なんて…」とそれに気後れしてしまう若者もいるのではないかと思います。集まる若者のトラブルや課題がありましたら教えてください。

青砥さん
鋭いご質問です…。自分の意思でEMANONに来る必要があるというのはそうですが、まずは認知してもらわないといけません。認知してもらうときに目立っている人たちから知ってもらうと、たしかに手っ取り早いですよね。気後れしている人たちに来てもらうためにどうするのか考えると、地道にやるしかないと感じています。美味しいケーキや飲み物があると宣伝できるのも、カフェの良いところです。また、たとえば10月ならハロウィンの飾りを作ろうとか、ハードルの低いイベントも用意するようにしていますね。ボランティアにしても、さっきはすごいよねって言いましたけど、福島の高校生って意外とボランティア慣れしているんですよ。ボランティア経験のある子は多いので、「ボランティアならやるよ」と参加してくれる子も多いです。行政系のお堅いボランティアもやらされる系のイメージが強いですが、それも一つの形としてありだと思っていて。それをきっかけにコミュニケーションの糸口ができて、そのままEMANONを居場所にしてくれても良いわけです。きっかけは連れてこられた場であったとしても、自分の気持ちを言葉にする時間をなんとかねじ込んで…居場所にしてもらえる工夫は、怠らないようにしています。

時間ギリギリまで使い切った視察会。
まだまだお話を伺いたい、青砥さんのようなことがしたい…参加者の中で、いろんな思いが溢れているのを感じました。

 

■旅を終えて


第1回でご紹介した「浜の暮らしのはまぐり堂」を作られた亀山貴一さんもそうでしたが、青砥さんがEMANONを開こうとしたきっかけは、東日本大震災でした。

大きな困難に直面したとき、それまで当たり前に流していたことが、大きな課題として私たちに立ちはだかります。

その時に逃げることもできるだろうけれど、逃げずに向き合った結果、新しい何かが生まれるのかもしれない。

コロナを経験した私たちに、EMANONと青砥さんがこれまでされてきた挑戦が与えてくれたヒントは、非常に大きいものだったのではないでしょうか。

 

まだまだ続く、コミュニティカフェをめぐる旅。

今度は、どんな出会いが待っているのでしょうか。

■事業概要

    • 視察先:コミュニティカフェEMANON【福島県白河市】
    • 日時:2021年10月26日(火)19:00~21:00(チェックイン18:45)
    • テーマ:高校生びいきの古民家リノベーション交流カフェ
    • ゲスト:亀山貴一さん(一般社団法人はまのね代表理事)
    • 定員:25名(最少催行人数5名)
    • 費用(税込) 一般:2,000円、学生:1,500円(院生は除く)
    • 詳細は以下サイトから
      コミュニティカフェをめぐる旅 vol.02
      (レポート:吉谷友尋)